“夢中”の麻薬に冒されて。

先日、読了。駆け抜けました。やや異常?とも思える熱量で夢中になって読みました。読み終えて振り返ると、一体どういうスピードで読んだのだ???と自分で自分に疑問を抱くほど、読み終えるために必要なはずの時間と読み切ったタイミングとの辻褄があわず(自分の読書スピードではとても読み切れない時間・日数)首を傾げるばかりです。読んでいたときの自身の記憶が一切ないので(本の内容はしっかり覚えている)無意識に「精神と時の部屋」にでも入って読んでいたのかもしれません。


悪霊シリーズ /ゴーストハント。作者:小野不由美(敬称略)

いつしか私の中で幻・伝説化していた作品。『怖い・面白いホラー小説』にありつきたくて人々のオススメ・感想を検索すると、必ずと言っていいほど登場してくるこのシリーズ。わたしは普段から読書家というわけではないけれど、たまに湧いてくる読書欲ってのがある。湧いたタイミングでどんな本を読もうかなと思う度に「悪霊シリーズがどんな作品だったのかをサラっと調べる」を繰り返してた。明るく社交的な主人公(JK)。ひょんなことからゴーストハントを生業とする少年の助手をすることになり、数々の超常現象に遭遇、解決していくお話。元々ティーンズ向けだったこともあり、作品の説明文からは話の雰囲気に恐ろしさは感じられず面白そうだけどライトなイメージ。かなり古い作品でリライト版ですら10年前のもの。そうそう本屋に並んでもいないから、思いついたときすぐ手に取れるわけでもない。”とびきり怖いくて面白い”を求める自分としては、いつか読んでみたいと思いながらも、中々手に取る機会を作れずに後回しを重ねて現在に至ってしまっていたけれど。


此度、ファン待望の文庫化がなされたことで遂にわたしも手に取ることができた。

感想、あまりにも最高。その想いを少しでも書き留めておきたい。


まず、主人公の一人称で読みやすい。そして、主人公は超常現象や心霊現象にあった経験も無ければ不思議能力も知識も(最初は)一切持たない普通の子。故に、作中その子が現象の詳細や不思議知識に「へぇ~!!」と驚きの声を上げる度に、その後ろでわたしも「へぇ~!!!」と一緒になって感嘆驚嘆納得しながら、ぐいぐい引き込まれていった。お話は、流石みな口をそろえて面白いというのも納得の内容。なにより、しっかり怖い。(最重要事項)一度、夜中に夢中で読んでいる最中「こっわ...」と恐怖に心細くなり、謎に刀剣乱舞を起動してしまった(笑)(本丸と繋がっていればとりあえず大丈夫かな、みたいな)


もっとも刺さった点は、起こる現象・現れる得体のしれない存在を「心霊」のような簡単な言葉一言で片づけず、徹底的に調査分析考察をし、それでも「分からない」「科学的に証明できない」と判断せざるを得ない状況になったとき初めて、超常現象・心霊現象と見なし調査・解決をしていくところ。これが本当に良かった。わたしのような、興味はあるくせに斜に構えて「ふーんw」と草を生やして見てしまう輩には特に。加えて、オカルトや超能力心霊系についての説明がかなり易しく丁寧にキャラクターの会話としてなされるため、スムーズに頭に入ってきやすく非常に勉強になった。途中ノートを取りながら読み進めたりしたときもあったくらい。入門の入門の入門書くらいにはなるのじゃないかしら。


1作目から面白かったけれど、全巻読み終えた今思えばイントロダクションに過ぎず、2作目からグッと濃度が増す感じ。1作目を読み終えてすぐに2作目を読み始め、結局購入当日に2冊とも読み終えてしまった。ありがとう、あの日の日曜日。


さて、このゴーストハントは1冊完結ものの全7巻。此度の文庫化は、文庫版1・2巻(6/12同時発売)から1年かけて発売されていくそうな。ちなみに、3巻の発売は9月の予定。


無理。

3巻の発売まで、とても待てない。待てるわけがない。まして最終巻が発売されるのは1年後。とてもじゃないけど無理。没入ぶりからくる自分の堪え性の無さは何時ものことだけど、それだけじゃない。わたしは知っている。ここ数ヶ月で誰もが痛感したはず。今日明日明後日、来月半年一年後。いまと同じ未来がある・来る確証などないことを。

予定通りに発売されないかもしれない、されたとしてもその時に読書を楽しむ状況が自分にあるのかなんて分からない。とにかく、全話読むまでは終われない。絶対。そこで、続きの3巻以降の文庫化は気長に待つとして、とりあえず10年前に発刊されているリライト版をすぐさま図書館で借り、ひとまずの安心を得て気持ちを落ち着かせた。しかしながら、本の返却後、読みたいときすぐに読めるよう手元に置いておきたい欲求にどこまで耐えられるのか。果たして。


最終巻を読み始めるときの気持ちの高まり、読み終えたあとに包まれたなんとも言えない余韻。本当に素晴らしかった。最終巻では、冒頭からキャラクターたちそれぞれに別れの匂いが漂い始め「あ、終わってしまうんだな...」と寂しさが込み上げるも、だんだんと物語が閉じていく様、ゆるやかさ、温度感、、、展開する色々が自分にとっては心地よく、こんなにもやわらかく結末をランディングしてくれた作品は初めてかもしれない。初めてでなかったとしても、自分史上トップに君臨してもいいくらいの終わりだった。解消されなかった謎はありつつも、それはそれとして浪漫というか良き余韻として噛みしめ味わった。まぁ、10代のわたしだったらきっと納得いっていないだろうな、とは思った(笑)


まるでジェットコースター。あっという間の4日間。仕事以外の時間はすべて、一色。

溺れた。まみれた。ぶっ飛んだ。楽しかった。疲れた。


夢中になりすぎて燃え尽き症状が凄まじく、日常を取り戻すのにもう少し時間がかかりそう。当記事タイトルの通り、夢中はまるで麻薬のようだった。(麻薬やったことないけど苦笑)やめられないとまらない、寝たいけど眠れない、もはや飢えのような渇望、常に頭が気持ちが高ぶりまくりの興奮状態、ここまでの感覚は本当に久しぶりだったように思う。同じように刀剣乱舞にも夢中だけれど、ソシャゲと違ってきちんとした終わり(最終巻)があるものだったから、終わりを求めて・終わりへまっしぐらに向かっていく熱が生じ、余計にだったのかもしれない。


読み終えて、ホッとした。




と、落ち着くには早かった。

まさかの、続編(上下巻)があった。しかも、下巻はプレミアがついた同人誌を思わせる金額。一瞬怯んだけれども致し方なし。購入した瞬間は、なんだか懐かしい気持ちになった。


「(本を発見する)これは...!!!(金額を見る)お、お高い...しかし、これを逃したら、もう......っ!くっ!!!」と心で泣き呻きながらレジへ向かう、あの気持ちを思い出した。


しょうがないもん。どこもかしこもその価格帯でしか売ってないんだから。

若干切れ気味な物言いになってしまった。どうにもできないやり場のない心の叫び。


これを購入するにあたり、初めてメルカリを利用した。恐る恐る取引したら普通に何の問題もなく届いた。あっけなくて逆に驚く。


というわけで、また暫く夢中の時間がはじまる。

今度はもう少し落ち着いて冷静に楽しみたい、と思ってはいる。


さぁ、、、どうかな(笑)

蠍のひとさし