神の在るところに人の暮らし在り
明確な強い衝動ではなく、ぼんやりムズムズとした感覚で、ゆるくどこかへ行きくなってきた気がしてきた昨日の夕刻あたり。3月5日は啓蟄だったらしい。なるほど...。自分もやはり無自覚に自然に、季節の巡りの中で生きているんだなと感じた瞬間。
私は、できるだけ人間のいない場所が好きで、特に旅先では人間がいなさそうな場所にわざわざ行ってみたりする。あの人気のない雰囲気が大好きなのだ。あそこにはきっと誰もいないだろうと思い行ってみた場所に先客がいると、身勝手にも少しだけガッカリしたりもする。がらーんと人間の気配がしない場所に、廃寺や廃神社があったりするとなお心が高揚する感覚を抱く。あのザワザワする感覚が好きだ。
感覚というものは、なんとなく感じる心地よさ他諸々...と言うような漠然としたもので、なぜか?と明確な理由を問われ言語化を求められると、自分のことながら「うーむ?」と考え込んでしまうが。人間の気配が薄い場所に佇む朽ちた何かに感じる謎の高揚感については、説明が出来るようになった。理由は色々とあれど、大きな理由の一つとして、人ならざるものがいるんじゃないか、何かあるんじゃないか、などいったオカルト的なおどろおどろしさや神秘を感じ、奇妙なものに出会えるかも起こるかも的な非日常に対する期待や好奇心、少しの恐怖による胸の高ぶりといった、不謹慎なマインドによるものであった。けれども最近では、目に見えない存在や現象が云々などと思うどころか、その場所には人間の生活・暮らしがあったのかと、寧ろ人間の存在を強く思うようになった。
きっかけは、かつて自分が住んでいた場所(祖父祖母や母兄弟たちが代々住んでいた家)で起きた古い話を聞いたことから。
実は、その家の裏山には山の神様を祀った岩があるんだそうな。なんでも、数十年前にその岩が酷く(?)落石をしたりなんだり、なんやかんやあったことがあり(新聞にも載ったらしいので図書館で過去の新聞をひたすら見て探したものの、途中で挫折したため詳細は不明)、近所の能力者的な人物がそれらを鎮めるために「大山神(確かそんな名前だったと思う)」と称して?お祀りしたんだと。そんなようなお話。
まるで漫画のように能力者的な人物が都合よく近所にいたなんてことにも驚きだし、あの山にそんなエピソードがあった&神様がいたことにも驚いた。
忘れ去られた面白話が数十年の時を経て、その山の関係者(すなわち我々)の間に浮上してきたのは、昨年夏の出来事。
いま私が何も知らずにその山でひっそりと朽ちた大山神の石碑を見つけたら、間違いなく勝手な神秘や不可思議な何かを感じてあれやこれやと憶測妄想を展開したと思う。だけど、もうそうは思わない。思えない。
この話を聞いたとき、はじめは「なんだその不思議話!めっちゃ面白!オカルト案件キター!!!wktk」くらいにしか思わなかったのだけれど、ふとじわじわと、神様も不思議も、結局人間が創り出しているだけ...?というか、神様がいたというより人間がいたという側面の方を強く感じるようになった。そして遂には、廃神社や廃寺の不気味さ恐ろしさからくる高揚感よりも先に、そこにかつてあったであろう人間の存在や生活の営みに思いを馳せるに至った。
何某か起こって神様を祀ったり、祀らずとも言い伝えられている話等そういったことは全国津々浦々にあるし、よくある・よく聞く話であったのに、ずーっとただぼんやりと不思議で面白いとしか感じておらず、私は今回我が家の山の話を聞いた時にはじめてハッとしたのだった。ハッと、気がつくことができた。それらは寧ろ神がどうのこうのというより、そこには確かに人間の暮らしがあったのだという証左でしかない。そんな当たり前の事を、我がことになって、ようやく。
それからは、たまに見かける謎の神社やら石碑を見ると、神秘や不思議どころか人間臭さを感じるようになり、心霊やオカルト好きとしては正直「な~んだ。ちょっとつまんないな」などと思ったりもするけれど、最近ではその人間臭さが温もりと感ずるものに変わり、ほっこりするまでになったりして、自分の中にぷかぷかと浮いている、よく分からない事についての色々が、何か一つ、ソフトランディングしていって昇華されたような気がしている。これが、自分なりの答えに辿り着いたというやつか?
(余談。これまではなんとなく「廃寺/廃神社(神とか霊とか)>廃屋」という感覚があったのだが、寧ろ廃屋のほうがよっぽど怖くね?と思うようにもなった。そしてオカルト心霊系YouTubeがいよいよ面白く思えなくなってきて、また一つ楽しみが減ってしまったw)
ちなみに、件の岩は今もきっとあるらしい。
祀り上げられた石碑へは、季節の良い時期に連れて行ってもらうようお願いはしてあるものの、話を聞いてから時間は経ち未だに行けてないけれど。今年は行くぞ。楽しみだ。
そんな、とりとめもないお話を、突然に。
以上、月子でした。ではまた。
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